■見習いトレーナーの奮闘記■

【アラバマ編】
#7: フットボール部 - インシーズンA

今回は実際のゲームデー(試合当日)にSATが何をするのかを紹介したいと思います。

【試合開始5時間前】
ATRに集合。スタジアムにもっていく用具などをトラックに積み込みます。スタジアムはコンプレックスからすぐそこにあります。スタジアムに着いたらそれらの用具を降ろしてフィールドやロッカールームに運び込みます。

【試合開始4時間前】
ロッカールームにドリンクを用意したり、用具をばらしてセットアップなどの準備に入ります。基本的にロッカールームに女子は入れないのでフィールドセットアップは女子の仕事、ロッカールームの仕事は男子の仕事と自然に分かれていました。またこの時間はそこまで忙しくないのでスタジアムをうろちょろしたり写真を撮ったりしていました。

【試合開始3時間前】
選手がスタジアムに到着します。選手達は前日からスタジアムに程近い大学内のホテルに泊まっています。ヘッドATやアシスタントAT、GAらはホテルに出向いてホテルでテーピングをしてしまいます。試合当日SATがテープを巻くことはほぼありませんでした。私はロッカールーム内で選手が必要なストレッチやら雑用をこなしていました。試合前のロッカールームはやはりぴりぴりしていてたのをまだ覚えています。

【試合開始1時間半前】
選手がポジションごとに時間をずらしながらウォーミングアップのためにフィールドに出て行きます。その頃にはスタジアムにも徐々に観客が入り始めて試合前の独特な雰囲気が出てきます。練習中アウトサイドラインバッカーを担当していた私もアップ時には彼らについて必要に応じて水などを渡していました。全員が揃うと準備運動。そのあとフォーメーションなどで体を動かし、一通り終わるとロッカールームに帰っていきます。その頃にはスターティングラインアップのアナウンスなどもあり、観客も大分埋まってきていていよいよ試合が始まるのだと感じさせられます。

【試合開始30分前】
ロッカールームで最後の調整。再びストレッチやマッサージ、スポーツクリームを擦り込んだりと必要なことをSATは手助けしていました。最後にヘッドコーチとのミーティング。士気を高めるためのスピーチがあった後、選手達はフィールドへとつながるトンネルをくぐります。

【試合開始10分前】
スタジアムのトンネル内でスタジアムに流れるアメリカ国歌を聴きます。終わると同時に選手がフィールドへダッシュで駆け入ります。マーチングバンドの演奏が鳴り、云万というファンの完成が轟き、キックオフも間近。私達スタッフはその選手入場の一番最後に陣取りスタジアムへ入っていきます。この瞬間が私は大好きでした。

【キックオフ!】
試合中、私はワイドレシーバー担当として主に水分補給をしていました。アラバマの攻撃中はサイドラインにいて交代して帰ってくる選手に水を補給。ワイドレシーバーは手を濡らしたくないのか、もしくはただ単に怠け者なのか、自分でボトルを持たずにSATが水をボトルから出してあげていました。後はタオルで汗を拭いたりと、まあ言ってみれば雑用です。アラバマが守備中は大抵のワイドレシーバーはサイドライン後方のベンチに座っているので彼らが陣取っている付近に私も待機しています。サイドラインからは正直試合は見えないのでスタジアムに備え付けてある巨大オーロラビジョンで試合を見ていました。

【ハーフタイム】
ハーフタイムはとにかく水分補給とエネルギー補給。「ソルトピル」と呼ばれる塩分が含まれるタブレットをものすごい発汗している選手には摂取させていました。あとは同じようにストレッチなど。選手はまずポジション別のミーティング、そしてオフェンス、ディフェンスに分かれてミーティング、そして最後にヘッドコーチからのスピーチ。20分のハーフタイムはすぐに終わってしまいます。

【後半開始】
やることは前半と同じですが、試合終了5分前になるとSAT一人がロッカールームに帰って帰ってくる選手のためにドリンク補充などの仕事があります。試合終了直前のいい時間をミスしてしまうのでこの仕事はみんなあまりやりたがりませんでした。

【試合終了】
試合終了と同時にフィールドの片付けに入ります。あまった水やドリンクを全部流したり、巨大な冷却ファンをばらしたり、その他もろもろ急ピッチで片付けは行われます。ロッカールームの片付けも同時進行です。試合後のロッカールームは勝敗によって雰囲気が全く違います。ただ、勝敗に関わらず当然のことながら何十人というどでかい裸の選手がうろちょろしているのは良く考えてみると滑稽かもしれません。よほどの大きな怪我が無い限り試合後のトリートメントは翌日に回され、選手はすぐにスタジアムを後にします。それに遅れることなくアスレティックトレーナー陣もトラックに乗ってコンプレックスへと帰っていきます。コンプレックスでトラックから荷を降ろしたところで解散。約半日後家路につくことになります。

【おまけ】
アラバマのホームはタスカルーサにある「Bryant-Denny Stadium」ですが、準ホームグラウンドとしてバーミンガムにある「Region Field」も数回使いました。この場合は朝早くにATRに集合してチームが宿泊するホテルへ合流。朝飯を食べたらまたすぐにスタジアムに向かって選手を迎え入れる準備をします。帰りはバーミンガムからタスカルーサまでの1時間の高速道路を全て警察がエスコートしてくれるのです。アスレティックトレーナーのバンはチームの最後部につけるのですが、その際の優越感はなかなかのものでした。

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