■見習いトレーナーの奮闘記■

【アラバマ編】
#5: フットボール部 - プレシーズン

アラバマのアスレティックトレーニング学部に無事合格し、晴れてアスレティックトレーナーへの道を踏み出した私。アスレティックトレーナーになるためには必要な知識を頭に叩き込むだけでなく、実際にその知識を現場で実行してみるのも重要です。そういった場が学部に入ると提供されます。プログラムに入って最初の学期(セメスター)の実習現場がフットボール部でした。先にも触れましたが、アラバマフットボールは全米でも有名で60年代、70年代にはアラバマに敵無しとまで言われたほどの強豪。近年は低迷していますが、それでも1992年にはナショナルチャンピオンに輝いています。が、フットボールに配属された当初はそういった事は一切知らず、ただ働くぞ!としか感じていませんでした。

フットボールの練習は8月頭から始まりました。最初の3日ほどは新入生だけの練習。そのあと在校生が合流して本格的な合同練習となります。練習初日には全ての選手が健康診断を受けて、フットボールをするにあたって健康上のリスクなどがないかなどを調べます(健康診断を俗に「フィジカル」といいます)。私は選手の尿検査の助手をしていました。何より驚いたのは選手達のサイズ。でかいことこの上無し、といった感じ。おまけに愛想がないから余計おっかない。英語もままならなかった当時の私は特に何かすることもないままフィジカルを終えました。

学生トレーナー(以後SAT)の仕事は、まず練習前に水分補給のためのカートの準備。選手のミーティング前には選手達の足首にテーピング。SATは主にWalk-on(奨学金なし)の選手達にテーピングを施します。練習前の治療の手助けもSATの仕事。練習前、練習後の体重測定(Weigh-in/Weigh-out)、夏だったため大量の氷の確保、ロッカールームのスポーツ飲料の準備。練習時には各ポジションにSATが一人ずつ就かされ、主に水分補給やタオル、ちょっとした怪我の処理(擦り傷など)を担当します。

プレシーズンの夏のワークアウトは「3-A-Day」と呼ばれます。つまり練習が1日に3回あるという意味です。最初の練習は朝7時から。次の練習は11時半から。そして最後の練習は3時、もしくは4時からでした。朝は5時半までにトレーニングルームに出向き、夜は最後の練習が終わってから片付け、そして練習後のトリートメント。トレーニングルームを出るのは夜の8時ごろ。ほぼ半日フットボールコンプレックスに詰めている状態でした。

私の担当したポジションはアウトサイドラインバッカー(OLB)。今でこそフットボールを追いかけるようになったのでこれが何のポジションは明白なのですが、当時アメフトなるものに無知だった私はラインバッカーが何なのかさっぱり判りませんでした。おろかルールすら知らなかったのです。最初は他のSATの仕事振りをみようみまねで覚えていました。練習の流れは基本的に毎日同じなので、最初さえつかめばそれほど難しくはありませんでした。ちなみにラインバッカーとはディフェンスのポジションでラインマンの後ろで相手をタックルするのが役目です。詳しく知りたい方は私のもう一つのHP【Any Given Saturday】を見てみてください。

プレシーズンの練習は8月頭から8月末、秋学期が始まるまで続けられました。全てが初めてだらけだったこの約3週間、振り返ってみると私にとっては2ヶ月くらいに感じました。こうして怒涛のSAT1年目は始まったのでした。

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