■アスレティックトレーナーとは?■


今でこそ「アスレティックトレーナー」という言葉が少しばかり広がってきたように思えますが、私がアスレティックトレーナーを目指しだした1996年頃、アスレティックトレーナーという言葉ばかりか、その情報すら入手するのが困難でした。現在さらに多くの日本人がアスレティックトレーナーになるべく海を渡ってアメリカにやってきているようです。そもそもアスレティックトレーナーとはどんな職業なのか?それをここでは簡単に紹介したいと思います。

「トレーナー」や「トレーニング」という言葉に惑わされる人は非常に多いです。私が留学してきたときもアスレティックトレーナーを目指して留学してきた日本人で実はコンディショニングトレーナーを学びたかった、という人が結構いました。そもそも「トレーニング」というのは「訓練する」という意味がまず先に頭に浮かぶと思われるので、「トレーナー」といえば「訓練する人」、つまりパフォーマンスをあげるための知識を持つ人、というふうに思う人も多いかと思われます。しかし、そういった「訓練する人」つまりストレングス・コンディショニングトレーナー/コーチが「作る人」とすると、アスレティックトレーナーは「治す人」といえるかもしれません。もちろんアスレティックトレーナーの仕事は治すだけではありませんが、少なくとも選手の怪我に大いに関係している職種であるといえます。

【救急処置】
アスレティックトレーナーとしてはさまざまな役目がカテゴリー別に定められていますが、個人的にはこれが最重要だと思っています。究極、「命を救う」ということだと思っています。例えば練習中選手がゴールポストに激突して首に重度の傷害を追ったとか、ボールがおなかにぶつかって内蔵に危害が及ぶ可能性があるとか、試合中に突然倒れて心停止状態に陥ったとか・・・。そういった緊迫した状況でいかに冷静にそして適切に事態に対処できるかがもっとも重要な仕事だと思われます。もちろん実際アスレティックトレーナーとして働いている上でそういったことにめぐり合うことはめったにありません。それでもこういったスキルをもっている人がアスレティックトレーナーであるべきだと思います。

【怪我防止】
怪我は起きないほうがいいに決まっています。起きてしまっては復帰までに時間がかかる怪我もあります。もちろん防げない怪我もありますが、可能な限り怪我の防止に努めるのもアスレティックトレーナーの勤めです。一番身近なもので言えばテーピング。足首のテーピングは当然のことながら足首の捻挫を防ぐためのテクニック。サッカーのシンガードも、ただ与えられたものを選手に付けさせるのではなく、常に素材、強度、サイズなどを選手に合わせて装備させるのも立派な怪我防止の一方法。その他にもバレーのニーパッド、アメフトのショルダーパッド、野球のヘルメットなどなど、防具のフィッティングも重要な仕事です。また怪我防止に繋がるメンテナンスのエクササイズ、例えばバランストレーニングやアイコーディネーショントレーニング(動体視力)、特定の筋肉のトレーニングなども重要な怪我防止の一種です。それらを選手に正しく指導するのもアスレティックトレーナーの仕事です。

【怪我の判断】
サッカーや野球、そしてどんなスポーツでも競技中に怪我が起きたとき、ベンチからチームスタッフが駆け寄ってなにやら処置を施しているのをテレビやその場で見たことがある方は多いのではないでしょうか。何を隠そうそういったスタッフこそがアスレティックトレーナーなのです。実際に目の前で起こった怪我(急性)やずっと患っている怪我(慢性)の場合でもどの部位がダメージを受け、どの様な種類の怪我で、どのような処置が今必要なのかを判断する能力を持ち合わせているのもアスレティックトレーナーです。ここで正しい判断が出来ればその後の治療、リハビリ、そして競技への復帰もスムースに行きます。最終的な怪我の診断はドクターに任されますが、ドクターへのアクセスが乏しい場合にはアスレティックトレーナーの判断もまた重要になってきます。

【治療、リハビリの施行】
基本的にはやはりドクターの方針を仰がなければなりませんが、どうやって選手をその競技へと復帰させるかを選手が負っている怪我からプランを立てて治療、リハビリしていくのもアスレティックトレーナー。ここでは怪我の種類からステージ(どれくらい深刻か)を見定めて、それにあった治療、リハビリを考えていかなければなりません。それにはより深い生理学の知識(運動生理学、病理生理学など)やら理学療法の知識、さらにはさまざまなリハビリエクササイズの知識、とくにマニュアルセラピーが個人的にはこれから重要になってくると思われます。先にも述べたようにドクターのアドバイスを頻繁に受けられないような場合にはアスレティックトレーナーが担う役割はさらに多くなります。

またこういった目に見える役割だけでなく、コーチや選手、親へのスポーツ傷害の教育、その他もろもろの雑務(書類処理など)、選手の健康管理、外傷処置に関する全ての知識を備えた職種がアスレティックトレーナーだといえます。